東大 国際社会科学専攻の外国語試験対策について

東京大学大学院 総合文化研究科 国際社会科学専攻の外国語試験対策

英語・論述担当の高橋です。

本日は、東京大学大学院、総合文化研究科、国際社会科学専攻(国際関係論分野・相関社会科学分野)の外国語試験対策について記します。

(1)東大 国際社会科学専攻の外国語試験の概要

東京大学総合文化研究科、共通英語試験について」ですでに記しましたように、東京大学総合文化研究科の文系の試験では、「人間の安全保障プログラム」を除くカテゴリーでは、共通試験としての「外国語I(英語)*」と「外国語II」が課されます。「国際社会科学専攻」に属する、「国際関係論分野」および「相関社会科学分野」では、「国際社会科学専攻として共通の問題が出題されます。

*この共通試験については、上のリンクをクリックしていただければ、詳細な分析を提示してあります。

この国際社会科学専攻の外国語試験の特徴として「外国語II」で選択する科目が1科目で良い、ということが挙げられます。外国語Iは最初から英語が指定されています。これに対して、外国語IIでは、「英語・フランス語・ドイツ語・中国語・ロシア語・スペイン語・韓国朝鮮語」のうちから1問を選べば良いわけです。

言語情報科学専攻・表象文化論分野・比較文学比較文化分野・地域文化研究専攻では、外国語IIは2科目選択しなければならず、したがって、英語に加えて第2外国語を学習しなければなりません*。一方、国際関係論分野および相関社会科学分野については、外国語IIで英語を選択すれば、第2外国語を学習していなくても受験することができます**。

*言語情報科学専攻については、外国語の中から「日本古典」が選択可能です。詳しくは「東大 言語情報科学専攻 受験対策について(外国語・専門問題)」をご参照ください。

**総合文化研究科で、ほかに第2外国語を学習していなくて受験可能なカテゴリーは、「人間の安全保障プログラム」と「文化人類学分野」です。前者については「東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの試験対策について」のページを、後者については「東大 地域文化研究専攻、超域文化科学専攻の外国語対策について」のページをご参照ください。

このように、英語のみで受験できるのが、東大大学院、国際社会科学専攻の特徴の一つと言えるでしょう。ただし、特定の国の政治や社会を研究する人も多いのがこの専攻です。そうしたテーマで研究論文、研究計画書を提出する受験生は、外国語IIにおいて、その当該地域の言語能力を示すことは必須と考えるべきです。(相対的には英語の方が得意だから、という理由で英語を選択するのは危険です。大学院入試の一次試験は、自分の研究を行うための能力の証明という面が強いため、面接などで厳しく質問されたり、不合格の要因になってしまう恐れがあります。)

英語のみでも受験できるため、合格のための要求が高くなる、と考えたくなるかもしれませんが、昴教育研究所の過去の結果から見る限りは、他の総合文化研究科の他のカテゴリーより特段要求が高いわけではなさそうです。変な言い方ですが、「まあ、普通に難関」といったところでしょう。

(2)東大 国際社会科学専攻の外国語試験

毎回のこの記事での言い訳ですが、私は英語の教師のため、他の外国語の試験内容についてはご紹介できません。ただし、英語以外の言語は、例年、前文を日本語に訳す出題です。時間に対する分量としては、東大総合文化研究科の他のカテゴリーと同程度です。

一方英語試験には、この専攻ならではの特徴があります。まず、基本的に英語は、1問だけ長文の問題が出題されます。出題の分量は、500語~800語程度です。他の専攻よりは長いものだとも言えますが、60分で1問に解答するものなので、時間が足りなくなって解答できなくなる、という可能性は低いでしょう。

そして特徴的なのが、出題形式です。文系で、文献研究を研究の柱(あるいはそのひとつ)とするタイプの専攻の大学院入試で主流の出題形式は、外国語の和訳です。実際、国際社会科学専攻でも、2013年度と2016年度を除けば、英文和訳が出題されています*。しかしその比重は相対的には小さいと考えられます。それ以外の出題形式に注意をすべきでしょう。

*最新の2019年度の入試問題は、まだ公開されていません。公開され次第、このページを更新するか、あるいは別途の分析を掲載します。

英文和訳以外で目立つ出題形式は、本文中の下線部の説明を求めるものです。その中で特徴的なのは、説明に対して、ほとんどの場合、字数制限が課されていないことです。

通常、説明や要約に字数制限が課された場合、自分が作成してみた答案と制限字数から、出題者が想定している説明の密度などが推測できるものです。「50字程度で説明しなさい」と言われれば、それを目安に本文中の該当箇所を把握して、そこを少しパラフレーズしながら答案を作成すれば良いでしょう。一方、国際社会科学専攻の出題のように文字数が制限されていない場合、いったいどの程度丁寧に説明すれば良いのか、という目安が付きづらいです。

この点に関して言えば、教師としてのアドバイスは、「字数を使って、できるだけ丁寧に説明する」というものです。多くの学習者は、「和訳」を好み、「記述・説明」には苦手意識を持っています。そうすると、つい、できるだけ短く済ませたい、という意識が働きます。わからない箇所について記して、そのせいで減点されたらどうしよう、という気持ちも働くかもしれません。

しかし、上述のように、この専攻の出題は、時間的には余裕があります。その分、説明問題では、自信をもって丁寧に答案を作成できる実力のある人と、つい及び腰になってしまう、苦手意識がある人との間で差が発生しやすいと言えます。説明問題だからと怖がらず、普段からしっかりと練習を行い、「わからない箇所をごまかす」のではなく、しっかりと論理的な関係性をつかんで、かつ、パーツを部分訳したような文章ではない、自分の言葉で答案を作成することが望ましいと言えるでしょう。

この点に加えて、もう1点、この国際社会科学専攻の英語試験の出題で注意しなければならないことがあります。それは、「英語による説明」を求める出題が、たまに出題されることです。具体的には、2015年度、2016年度に出題されています。特に2016年度は、4問中3問が英語での説明という出題で、慣れていない受験者はおおいに戸惑ったものと考えられます。英語で説明する場合に陥りやすいのが、本文のコピー&ペーストになってしまう、という状況です。日本語でも、アカデミックな英文の内容を説明するのは難しいのに、ましてや英語では、というわけです。しかし当然ながら、採点者は、本文の切り貼りのような答案は厳しく減点するものと予想されます。その意味では、自らの想念を英語で表現する力が必要になります。(このような部分への対応は、昴教育研究所の英語授業では、木曜日夜に開講する「英語ライティング」で行っています。)

2016年に上述のような試験が出題されてから2年間は、英語での解説を求める問題は出題されていません。完全に邪推ですが、もしかすると、「難しすぎて差が付かなかった」可能性もあるかもしれません。しかし、本来的には、国際社会科学専攻の院生の多くが、英語で論文を書いたり、発表を行ったりということが求められるのですから、いつまた、こういった出題があっても不思議はないでしょう。

(3)東大 国際社会科学専攻英語試験の出題内容

国際社会科学専攻を構成するのは、上述のとおり、「相関社会科学分野」と「国際関係論分野」です。「相関社会科学分野」は非常に広範な領域を含む、学際的なカテゴリーです。また、「国際関係論分野」も、狭義の「国際関係論(International Relations)」だけでなく、国際政治学・国際経済学はもとより、哲学倫理学、計量経済学など、広範な研究者や院生が所属する分野です。その意味では、どんなテーマの英文が出てもおかしくありませんし、逆に、専門用語の訳出の仕方が問題になるような*、極端にある専門分野に偏った出題でもありません。

*しかしそもそも、大学院入試の英文の理解において、「専門知識」が無ければ解けないような出題はありません。「専門知識」を強調することは、無知・誤解によるものか、さもなければ、ある種の脅し(ブラフ)として、難しさを印象付けようとするものであると思います。院試の英語は「難しい」です。しかし、その難しさは、英語をちゃんと学習し、かつ、知識などに頼らずに与えられた文の内的論理を追いかける力を身に着けることの難しさに帰着します。

ただし、一定程度、専攻の「色」とでも言うべき特徴はあります。過去の出題で目立つのは(1)昨今の技術革新がもたらす社会変化に関する出題(2)ある学問の方法論を問題にしたり、複数の学問領域をまたがることで、学問の存立基盤そのものを「批判」するメタレベルの議論(3)国際的な共通課題、貧困や環境に関する出題です。

ほとんどの場合、学術論文や文献の序論や、研究者が書いたエッセイなどからの出題です。語彙の難易度が高いのみならず、出題の文の筆者が言おうとしていることも、抽象度が高かったり、論理的な展開が難しかったりします。その分、「読み応えがある」と評することもできるでしょう。その意味で、表層的に英語の文を日本語に置き換えるだけでなく、「今まで考えたこともないテーマについて、いきなり英語で読んで考える」ということ(これこそ、「外国語を使って研究する」ということの本質ですが)に慣れていく必要があるでしょう。

基本的には、アカデミックな英語をしっかりと読み慣れていけば、十分対応できる出題だとは言えます。昴教育研究所の英語授業でしっかりと練習を積んだ受講生のみなさんは、しっかりと対処できています。助言としては役立たないかもしれませんが、結局のところ、しっかりとした英語力を身に着けることが、合格のための王道だと言えます。

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東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの試験対策について

東京大学 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの入試対策

英語・論述担当の高橋です。本日は、東大総合文化研究科入試における8つのカテゴリーのうち、「人間の安全保障プログラム(略称HSP)」の受験対策について記したいと思います。以下、5つの項目に分けて執筆します。

「8つのカテゴリー」については、「東京大学 総合文化研究科(文系)専攻 入試対策概要」をご覧ください。

*以下の解説は、基本的に、1月~2月に試験が行われる「一般選抜」を念頭に置いています。7月に試験が行われる「社会人特別選抜」については、日を改めて記します。

(1)「人間の安全保障」概念をめぐって
(2)東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの仕組み
(3)東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの入試の特徴
(4)東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの専門試験の対策
(5)東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラム 提出書類の対策

(1)「人間の安全保障」概念をめぐって

(この項目はアカデミックな内容を中心に書いているので、院試の情報を手早く得たい方は読み飛ばして(2)に行ってください。)

「人間の安全保障(human security)」の概念は、良く知られたことですが、ノーベル経済学賞を受賞したインドの経済学者、アマルティア・センが提唱した概念です。従来「安全保障」と訳される概念は、securityでした。これは基本的に、国家間の関係から紛争を管理する発想です。しかし、冷戦が終わったあとに噴出した民族紛争や内戦、また、従来より存在していた世界の南北間の経済格差の大きさなどから、国家の枠では捉えられない一人一人に焦点を当てたアプローチが必要になってきます。そうしたなかで、この「人間の安全保障」の概念は、問題含みの面もありつつ、国際社会で掲げられる理念になってきました。

この概念は、広範であり、それゆえに曖昧な面もあり、以前より「人権」などの概念に拠って行われてきた活動と必ずしも区別できません。(また、別に区別しなければいけないわけでもないでしょう。)ただ、「ケイパビリティ・アプローチ」という言葉が知られるように、教育やコミュニティに焦点を当てるアプローチを重視する方向へと国際協力を導く一助になっていると考えられます。また、従来は、発展途上国への支援に重点がありましたが、いわゆる先進国の中でも、相次ぐ災害や、新自由主義的経済政策のもとでの格差の拡大*などの影響から、「人間の安全保障」の理念を当てはめて論じたり、活動したりすることも増えています。実際過去の昴からの合格者でも、日本での問題に焦点を当てて論文を書いた人もいます。
*余談ですが、東大の人文社会系研究科の2016年度の英語試験では、トマ・ピケティの『21世紀の資本』の書評が出題されています。現在の経済的な格差の拡大にたいする問題意識は、人文・芸術系の諸学でも多いに共有されるようになっていることを反映したものだと言えるでしょう。

上記の点にも関連するところですが、筆者自身が関心を持つテーマに引き付けて、「人間の安全保障」という理念の今日的意義、あるいは問題性についても簡単に記します。

日本でもよく知られ、翻訳もたくさん刊行されているアメリカのフェミニスト、ジュディス・バトラーは、21世紀に入ってから、Precarious Life: The Powers of Mourning and Violence(『生のあやうさ―哀悼と暴力の政治学』)や、Notes toward a Performative Theory of Assembly(『アセンブリ―行為遂行性・複数性・政治』)などの著書を中心に、 “precarity”あるいは “precariousness”という言葉を一つの軸にして議論を行っています。いずれにせよ、なかなか訳しづらい言葉(上記のように、書籍のタイトルとしては「あやうさ」という訳が採用されています)ですが、それが意味する内容は明瞭です。2001年9月11日の事件以降、世界の多くの場所で、「テロとの戦い」と呼ばれる戦争が遂行され、それはテロと関係ない人々の命を奪い、生活を破壊してきました。また、近年、「新自由主義」という言葉に加えて、「緊縮austerity」という言葉が経済体制と国家政策を論じる言葉として焦点が当たっています。財政難などの名目で、福祉が切り下げられていくなかで、従来ならなんとか生をつないでいた人々の命が脅かされています。また、経済発展を遂げつつある多くのアジアなどの国々の都市では、深刻な大気汚染が人々の健康を蝕むとともに、様々な鉱山などの労働者にも、慢性的な身体の不調が襲い掛かります。これは本当に一部の現象を挙げただけですが、現在の社会では、「ほとんどの人々が、ただし異なった度合い・仕方で」生を危うくされている。このことがこのprecarity/precariousnessという言葉には込められています。

上記の「ほとんどの人々が、ただし異なった度合い・仕方で」という言葉が、この理念を理解するうえで肝要です。それは一方で、現在、「問題なく生きていけている」と感じている人々でも、いつ、何かの病気になって、生きていくのが困難になるかもしれない。また、「普通にやっていく」ことをめぐる、身体的・精神的負荷の大きさは、私たちの日常でも実感されます。一方でバトラーは、こうした自分自身の生のあやうさを、他者の生のあやうさへと連帯する可能性として考えます。しかし他方で、こうしたあやうさは、万人に平等に影響するのではなく、異なった仕方で、一部の/しかし非常に多くの人々の生をとりわけあやうくするものでもあります。こうした点を看過してしまえば、それは他者への想像力をかえって損ない、ともすれば、それぞれの人々が置かれた条件の差異を無視してしまうことにもつながりかねません。

「人間の安全保障」は現在、上記のような問題の大きな要因になっているもろもろの体制が、公的に掲げることのできる理念となっています。その意味では、「人間の安全保障」は、 “precarious life”を生み出している体制の一部を担っているとも言えるでしょう*。ただ、単にそうしたものとして「人間の安全保障」を批判し捨て去ってしまうばかりが取りうる方策ではないでしょう。「人間の安全保障」という理念の動員のされ方、それがもたらすものについて、常に批判的な視点をもちながら、その内部で世界をより生きやすくしていくことも、重要な仕事だと言えます。また、過去の合格者などの書いた論文や、その後の報告から、東京大学の「人間の安全保障プログラム」は、そうした批判的視座を包摂することができる枠組みであると考えます。
*一例を挙げれば、Angela McRobbieはThe Aftermath of Feminism: Gender, Culture, and Social Changeにおいて、ケイパビリティ・アプローチと、新自由主義体制における起業家精神の強調との共犯関係を論じています。

(2)東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの仕組み

上述のように、「人間の安全保障」は多岐にわたる領域での活動と理念を含んでいます。そうした点を反映してのことだと思いますが、東大の「人間の安全保障プログラム」は特定の専攻としてではなく、様々な専攻に所属して研究・活動を進めていくことができるようになっています。具体的には、文系の専攻で言えば、「国際社会科学専攻(国際関係論分野・相関社会科学分野)」「地域研究専攻」「言語情報科学専攻」「超域文化論専攻(文化人類学分野・表象文化論分野・比較文学比較文化分野)」、また、理系の専攻である「広域科学専攻」のいずれかに所属しながら、人間の安全保障プログラムとして研究・実践を進めていくことができます。

なお、上記のような所属を希望する専攻によって、異なる入試を行うわけではありません。入試では、「人間の安全保障プログラム」として共通の試験が課されます。

(3)東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの入試の特徴

東大の「人間の安全保障プログラム」では、独自の語学試験は実施せず、「英語能力を証明する書類」として、TOEFLないしはIELTSのスコアの提出を求めています。

注意すべきは、TOEICが利用できない点です*。人文系・社会科学系の大学院の場合、それほど多数派ではありませんが、理科系や公共政策大学院などでは、TOEICを利用できる大学院が多く、そのためにTOEICの勉強をしている人は多いでしょう。一方で、writing, speakingを求めるTOEFL、IELTSのスコアを上昇させるにはかなりの期間と努力が必要であり、そのため、早い段階から準備を進めていく必要があります。
*「人間の安全保障プログラム」の入試案内には、「TOEICはアカデミックな英語力をはかるものではないため受理しない」と述べられています。個人的に、この理念は素晴らしいと思うし、今後とも維持していってほしいと思います。

上記の英語力の証明書類とは別に、専門に関する筆記試験が課されます。これについては次の項目(4)をご覧ください。また、合否を左右する重要な要因として、「提出論文」「研究計画書」があります。これについては(5)の項目をご覧ください。

(4)東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラムの専門試験の対策

「人間の安全保障プログラム」の専門問題は、第1問が共通問題、第2問が選択問題です。

第1問は、「人間の安全保障」をめぐる一般的な問題です。ただし、出題の内容には、東大「人間の安全保障プログラム」ならではの問題意識もうかがわれます。2016年度の出題では、「人間の安全保障」の「人間」の意義について問う問題が、2017年度の出題では、「人間の安全保障」の理念の発展可能性を問う問題が出題されています。さらに2018年度には、「人間の安全保障」概念が国連で提起されて以来の時間の流れのなかで、この概念を批判的に再検討することが求められています。

この「第1問」に解答するにあたっては、「人間の安全保障」という理念の曖昧さへの理解が重要です。どこかに「人間の安全保障」についての完璧な定義が存在して、それを記せば合格できる、というような考えは捨てましょう。この言葉がどのような経緯で提起され、どのような活動と結びつけられてきたか、という点をめぐる最低限の理解は必要ですが、むしろ、そうした理念と歴史的展開を踏まえながら、「人間の安全保障」がもつ今日的意義や、その問題性を批判的に検討することができる受験生を求めるものと言えます。

第2問の選択問題では、与えられたキーワードを、「人間の安全保障」と関連付けて論じることが求められます。2016~2018は、8問中から1問選択して解答する形になっています。

与えられるキーワードは、「京都議定書」「パリ協定」などの具体的な国際的取り決めから、「生物多様性の保護」などの理念、「緑の革命」などの開発経済学の歴史に関わるもの、また、「格差社会」「性暴力」といった、より具体的な出来事、さらには、「bio-power(生権力)*」「例外状態**」といった、よりアカデミックな用語まで様々な用語が出題されます。そう聞くと難しく感じるかもしれませんが、実際には、8つの用語のなかで1つを論じられれば良いわけです。「人間の安全保障」という枠組みのなかで研究を進めたり活動していきたいと考える人なら、1つは論じられるテーマがあるはずです。特定の本を勉強するよりも、過去問をチェックしながら、自分が特に関心がある問題の現在の状況やこれまでの経緯などを調査していくことで、実際の試験で論じるために必要な知識や問題意識を養っていきましょう。
*bio-power(生権力):フランスの哲学者、ミシェル・フーコーに由来する概念。類語として、bio-politicsなどがある。今日非常に多くの分野(国際関係論、フェミニズム、クィア・スタディーズ、ディサビリティ・スタディーズetc.)で参照され、重要性を増している概念である。
**「例外状態」:もともとはドイツの法・政治哲学者、カール・シュミットに由来する概念である。今日では、イタリアの哲学者、ジョルジョ・アガンベンがシュミットからさらに発展させた概念として参照されることが多い。

なお、私が担当する昴教育研究所の論述対策講座では、こういった出題に対する徹底的なアウトプットを通じた対策を行っています。
(リンク「論述対策講座について」)

(5)東大 総合文化研究科 人間の安全保障プログラム 提出書類の対策

東大の「人間の安全保障プログラム」では、上述の英語試験と専門問題に加えて、二次試験までに、「論文等」および「研究計画書」の提出が求められます。英語試験のスコアと筆記試験の得点だけでは判断材料としては弱いため、この「論文」および「研究計画」が合格に大きな影響を及ぼすと考えるべきです。

まず理解しておくべきは、「研究計画書」は「論文」に付随する位置づけである、という点です。研究計画書は「今まで学習・調査してきて、どんなことがわかっているか」を基盤にして、「これからさらにどんな研究・調査の可能性があるか」という点を記すものです。したがって、現時点で自分が明らかにしていることを示す「論文」をしっかりと完成させることなく、「研究計画書」だけを作成することは不可能です。

「論文」を作成していくにあたって、「人間の安全保障プログラム」で発生しやすい問題を記しておきます。この領域の研究・活動は、実際に現地に行って、調査を実施するフィールドワークを含むことが多いです。この場合、実際にすでに、NPO・NGOやJICAなどで活動や調査に携わったことがある人なら対処できますが、大学の学部生から「人間の安全保障プログラム」の大学院を目指す人の場合、こういった経験を経ていない場合が多いでしょう。

こうした場合、文献を通じて調査を進める必要があります。しかし、現在進行形で発生している問題に対する文献資料は限られたものであり、過去の実際の合格者のテーマでも、日本語で単行本の文献があれば良い方で、多くのテーマでは、ホームページなどに挙がった報告などしか参考にすることができない状況でした。こうした場合に有効なのは、英語文献、英語論文を参照することです。国際協力などの分野では、日本語で書かれたものに比べ、英語で書かれたものは数十倍の分量があります。そうしたものを、できるだけ多く集め、少しでも読み込みながら、現地で調査ができない部分を積極的に代替していくことが必要になります。

一方、すでに調査・研究の経験があり、データを持っている人も、それで安泰というわけではありません。調査・研究を、単に「事実」として報告するだけでは、東大の「人間の安全保障プログラム」はもとより、その他の大学院でも合格は望めません。そうした事実を枠づけるために、当該地域の歴史についての幅広い文献を集め参照する必要がありますし、また、自分が行っている活動が、よりグローバルな文脈のなかで、どのような意義を持つのか、に対する注意も払う必要があります。その意味では、上記の受験者と同様に、日本語に限定されない幅広い文献資料を利用することが必要になってくるでしょう。

幸い、昴教育研究所では、「人間の安全保障プログラム」にこれまで多くの合格者を輩出してきた実績があります。もちろん、このページを見ている方が皆、昴での研究指導に関心を持っているとは限りませんが、ちょっとでも関心を持った方は、ぜひ昴がどのようなサポートができるのか、お問い合わせください。

(リンク「昴の研究指導」)

このページをご覧になった多くの方が、十分な準備をして良い結果につなげられることを願っています。

昴教育研究所講師 高橋

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東大 地域文化研究専攻、超域文化科学専攻の外国語対策について

東京大学総合文化研究科、地域文化研究専攻・超域文化論専攻の外国語試験対策

英語・論述担当の高橋です。

本日は、東京大学大学院、総合文化研究科のうち、地域文化研究専攻および超域文化論専攻(表象文化論分野、比較文学比較文化分野、文化人類学分野)の外国語試験対策について記します。

(1)東大 地域文化研究専攻・超域文化論専攻の外国語試験の概要

地域文化研究専攻および超域文化論専攻(表象文化論、比較文学比較文化、文化人類学)についてまとめて記す理由を含め、この4つのカテゴリーの大学院入試語学試験について、その概要を記します。

すでに「東京大学 総合文化研究科 共通英語試験対策について」で記したように、東大総合文化研究科では、TOEFLあるいはIELTSのスコアで選考を行う「人間の安全保障プログラム(HSP)」以外では、主として英文和訳および和文英訳を問う「英語I」という科目が共通して課されます。これに加えて、各専攻ごとに、1~2言語の試験としての「外国語II」が課されます。

東京大学総合文化研究科のうち、「地域文化研究科」および、表象文化論分野、比較文学比較文化分野、文化人類学分野から成る「超域文化科学専攻」では、この外国語IIで共通した問題が扱われます。そのため、本日の記事ではこの4つのカテゴリーをまとめて記します。

なお、上記のうち、「文化人類学分野」は外国語IIにおいて、1つの言語を選択することを求められます。したがって、外国語IIで英語を選択すれば、院試において英語のみで受験することが可能です。
(ただし、「東京大学 総合文化研究科(文系) 入試対策概要」でも記したように、文化人類学という学問は、特に日本以外をフィールドにする場合、言語能力に依存する比重が高いので、「英語のみで受験できる」などの理由で志望校にするのは危険です。たとえば、韓国をフィールドとして研究しようとする受験生なら、外国語IIにおいては「韓国朝鮮語」を選択することが当然に求められるでしょう。)

「地域文化研究専攻」「表象文化論分野」「比較文学比較文化分野」の受験生は、外国語IIの外国語科目(英語、フランス語、ドイツ語、中国語、ロシア語、イタリア語、スペイン語、韓国朝鮮語)のうち2科目を選択し、6問中5問を選択して解答しなければいけません。

また、「地域文化研究専攻」の場合では、対象とする地域の言語を優先して解答しなければなりません。たとえばフランスを対象とする場合には、フランス語3問を解いたうえで、英語の3問のうち2問を選択して解答する必要があります。

ただし、「社会人」の枠で応募する場合、第二外国語の試験が免除されている場合もあります。詳しくは、東京大学ウェブサイトの以下のページもご参照ください。

東大総合文化研究科 「修士課程・博士課程への出願」(外部リンク)

(2)東大総合文化研究科、地域文化研究専攻・超域文化論専攻の外国語試験

毎度のことですが、私の専門は英語ですので、英語を中心に記します。ただし、先に他の外国語の試験の形式について述べます。

「地域・超域」(と昴では呼んでいます)の外国語IIの多くの言語では、その言語を書く能力ではなく、その言語を理解する能力が問われます。ほとんどの言語では、3問とも、「日本語に訳しなさい」あるいは「和訳しなさい」という指示になっています。その点で言えば、外国語を読む能力に主眼を置いて力をつけていくことが大事ですね。総合文化共通問題である「英語I」では「和文英訳」が出題されますが、たとえば「英語+フランス語」での受験者の場合、フランス語を書くことは求められません。

ただし、韓国朝鮮語だけは、日本語の文を韓国朝鮮語に訳出することが求められています。この問題は、分量も多く、なかなか手ごわいかな、と思います。

(3)東大総合文化研究科、「地域・超域」の英語問題

「地域・超域」の英語試験でも、英語を書くことを求める問題は過去20年ほどさかのぼっても出題されていません。「英語I」では和文英訳などが出題されるため、そちらの対策も必要ではありますが、「言語情報科学」のような、英語の筆記力を厳しく問う問題は出題されていません。(→言語情報科学対策についてはこちら

ただし、試験形式は英文和訳には限定されません。かつては、「数的処理能力(numeracy)」についての英文を150~200字の日本語に要約する問題(2006年度)や、「イヌの飼育とヒトの言語能力」についての英文を200~250字の日本語に要約する問題が出題されていました。2007年度の、「アメリカ同時多発テロ事件以降のobituary(追悼文)」をめぐる英文についての問題のように、500語を超える長文問題も出題されていました。

それと比べると、近年は、英文和訳の出題の比重が増し、また、出題の分量も200語程度かそれ以下の問題が増えてきています。これに伴い、かつての「時間が足りない」という問題も解消されつつあり、2000年代と比べると2010年代の問題は、全体としては「易化」の傾向が認められると言って良いでしょう。

とはいえ近年でも、下線部を説明させる問題や、下線訳でも指示語を答えさせる問題など、単なる英文和訳ではなく、工夫した出題が多くなっています。また、出題される英文の内容も、なかなか面白いと同時に、「英語の勉強」だけをしていても触れる機会のないような英文が出題されています。たとえば現在の英語圏文化理論で重要な研究を行っているSarah Ahmedの「多文化主義」をめぐる出題がされていたり、また、「環境問題」の系譜学のような研究、かと思えば、「一人向け料理のレシピ本」の序文など、多岐にわたる出題が特徴です。

昴では、英語の学習を、「文法」「語法」「語彙」「構文」などから客観的に理解するとともに、(「背景知識」というよりは)「英語で今まで知らなかったことを知る」という経験を重視して、カリキュラムを構成しています。こういった態度は、東大総合文化研究科、地域文化研究専攻、超域文化論専攻の出題に対応するうえでも役立つでしょう。

また、拙著の宣伝になってしまい恐縮ですが、『詳解 大学院への英語』では、文化論、芸術論、フェミニズム、思想史、文化史などの文章をできるだけ取り上げており、東大総合文化研究科、特に「地域・超域の英語試験」への対策として有効だと思います。

「地域文化研究専攻」「文化人類学分野」「比較文学比較文化分野」「表象文化論分野」それぞれの専門問題や、提出論文については、後日改めて記事を執筆します。

昴教育研究所、英語・論述対策担当 高橋

【関連リンク】

東大総合文化研究科(文系)対策の概要について

東大総合文化、英語Iについて

東大総合文化研究科、合格者の体験記についてはこちらから

 

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東大 言語情報科学専攻 受験対策について(外国語・専門問題)

東京大学 総合文化研究科 言語情報科学専攻の入試対策について

英語・論述担当の高橋です。本日は、東大総合文化研究科入試における8つのカテゴリーのうち、「言語情報科学専攻」の受験対策について記したいと思います。以下、3つの項目に分けて執筆します。

「8つのカテゴリー」については、「東京大学 総合文化研究科(文系)専攻 入試対策概要」をご覧ください。

(1)東大 言語情報科学 入試の特徴
(2)東大 言語情報科学 外国語問題の特徴と対策
(3)東大 言語情報科学 専門問題の特徴と対策

(1)東大 言語情報科学 入試の特徴

東京大学総合文化研究科、言語情報科学専攻は、様々な形で、言語に関わる研究を行うことができる大学院です。過去の昴からの進学者では、「文学」を専門にする方、および「言語」を専門にする方*が主として同大学院に進学しています。総合文化研究科のなかでも、独自の、そして独特の外国語試験を実施しているのは、こういった側面の反映と考えられます。加えて、専門問題を分析するにあたっても、専攻のなかの「多様性」を念頭に置く必要があるでしょう。

*個人情報保護のため、細かい研究内容や研究アプローチは省略させていただきました。

(2)東大 言語情報科学 外国語問題の特徴と対策

言語情報科学専攻の外国語試験は、東大総合文化研究科共通問題である「英語I」と、専攻が出題する外国語II(2言語)から構成されます。したがって、最低2言語、場合によっては3言語での受験が可能です。外国語のなかには「日本古典」が含まれますので、日本語学や日本文学を専攻にされる方はこちらを選ばれる方が多いようです。その場合には、「英語+日本古典」にすることで、「第2外国語」を用いずに受験することが可能です。

東大総合文化共通の出題である「英語I」については、次のページをご覧ください。

東京大学 総合文化研究科共通英語試験対策について

さて、言語情報科学の「外国語II」の特徴を一言であらわすと…「難しい」です。

私が専門とする英語で言えば、第1問は、説明問題と下線訳の問題(年度によっては、4択の選択問題も出題されます)、第2問は、英語の文を日本語に要約(120~150語程度)、第3問は、日本語の文を英語に要約、という出題になっています。

第1問は、文章は「やや難」というところですが、出題形式は他の大学院の試験と似たようなもので、それほど問題は発生しないでしょう。厄介なのは、第2問と第3問です。

第2問の「英語を日本語で要約」は、受験生の力量によって差が大きく出る出題だと言えます。「要約」というのは、細部を適当に拾ってコピペすれば良い、というものではありません。自分の頭の中で、中心的なテーマとそれをめぐる主張を整理して、大胆に言い換えるなどの努力が必要であり、そのため、中途半端な英語力では、かなりポイントを外した解答になってしまう危険があります。昴の授業でも、要約問題の答案は大きく得点が分かれる傾向があり、そのため、しっかりとした英語の読解力を身に着けたうえで、しっかりと訓練する必要があるでしょう。

第3問の「日本語を英語で要約」は、大学院入試のみならず、大学入試を含めても、かなり特異な出題だと考えられます。実際この形式の試験を出題しているのは、総合文化研究科はもとより、東京大学大学院全てでも、この専攻のみです。

第2問と同様に、文章のテーマと主張内容をよく理解することが必要ですが、それに加えて、「自分なりに英語で考える」ことが求められます。日本語を第一言語とする学習者においては、インプットに比べてアウトプットが苦手、という方は多いです。(というか、普通どんな外国語学習においても、インプットよりアウトプットの方が得意、ということは、ほとんど考えづらいのですが。)そうしたなかで、「自分が表現できる範囲で日本語の文を置きなおして、英語で考える」ということが求められるだけに、この問題はかなり厳しいものだと言えるでしょう。不幸中の幸いというか、この出題形式は相当に難易度が高く、過去の合格者の報告などを聞く限り、あまり得点率は高くないものと推測されます。とはいえ、「白紙」はもちろん、あまりにも外れた答案で極端な低評価を受ければ、合格はおぼつかないと思います。少しでも英語力を高めて、対応していくようにしましょう。

最後に、英語以外の言語についても記します。上述のように英語の第3問が難しく、かつ、同試験では、第1外国語と第2外国語の各3問、計6問のうち、5問を選択すれば良い設定なので、英語の第3問を回避することを考えたくなりますが、なかなかそうもいきません。フランス語・中国語・ドイツ語・イタリア語・韓国朝鮮語では、日本語を訳出する形ですが、当該言語の運用能力を問う出題が出ています。また、中国出身の受講生の方の証言によれば、中国語の「中文和訳」問題2問のうち、1問は古典の中国語で、現代の中国の人は苦戦するそうです。「日本古典」の問題も、3問中1問は万葉仮名で出題されており、相当専門的な対策をしないと厳しいでしょう。以上を考えると、「当該言語を専門とする人」を除けば*、大変ではあるけれど、「和文英要約」を解答した方が良いかもしれません。
*たとえばフランス文学やドイツ文学を専門にする人が、「和文仏訳」や「和文独訳」を回避するのは、悪印象を与え、一次試験に合格しても、二次試験で不合格とされる危険があるので、その点は十分考慮してください。(もちろん、昴ではそういった点も具体的にアドバイスします。)

(3)東大 言語情報科学 専門問題の特徴と対策

昴での面談で、言語情報科学の専門問題について、「こんな問題解けない」というご相談を頂くことが良くあります。これについては、「出題の条件をしっかり考慮する」ことが必要です。

(1)で記したように、言語情報科学は、言語に対する様々なアプローチで研究する教員・院生が所属しています。そうした専攻の性質を反映して、試験問題でも、複数の領域の出題が掲載されています。純粋に院試の問題という観点から見れば、これは大きく分けて、「情報処理(プログラミング)」「言語学(言語学・言語教育学/第二言語習得(SLA)・社会言語学)」「韓国朝鮮語」の4領域に分けることができるでしょう*。このそれぞれ4つの領域から、第I問(用語説明)、第II問・第III問(論述問題)が出題されています。
*いうまでもなく、韓国朝鮮語も言語学ですが、出題に解答する前提として、韓国朝鮮語の能力が必要なため、ここでは便宜上、言語学とは異なる領域に分類しました。

ここで注意が必要なのは、「すべての問題に解答する必要はない」ということです。出題をよく読めばわかるように、第I問(20問程度)からは2問、第II問・第III問からは1問選んで解答すれば良いわけです。したがって、「自分の専門以外の出題は無視して良い」と言えます。

それぞれの領域の出題について、簡単に傾向を述べておきます。ただし、純粋な言語学と情報処理、および韓国朝鮮語は、専門性が高いため、門外漢からのコメントはできません。もっぱら、文学・社会言語学・言語教育学/第二言語習得(SLA)を中心に記します。

第II問はテーマ型の出題です。「文学と声」のようなテーマなどが出題され、それについて、具体例を入れながら論じる形が主流です。言語系でも、「言語変化」などのテーマについて論じることが求められることが多いですが、言語教育学ではしばしば、英語で短い文が与えられ、それの理解と知識の両方が求められることが多いです。第II問は、相対的に、知識を生かさないといけない問題だと言えます。

この点で言えば、文学系の受験者は、それほど対応に困ることは無いでしょう。文学の出題テーマは、特定の国に関するものではなく、近代以降の文学であれば、日本文学でも英語圏文学でも仏語圏文学でも独語圏文学でも(以下略)こたえられる内容です。そして、文学における「知識」とは作品について知識です。ある程度の文学作品を知っていれば、ここで与えられたテーマに引き付けて論じることは難しくありません。加えて、文学系は2題出題されるため、そのどちらかに引っかかる作品を考えるのは、慣れてしまえば簡単です。昴の「論述対策講座」では、こういった専攻ごとの出題に応じた練習も積極的に行っています。

一方、社会言語学・言語教育学の場合、ピンポイントで「知らないこと」が出題されると、解答を作成するのが困難になる恐れがあります。出題に求められる知識自体は、それほど珍しいものではないので、当該領域をしっかりと勉強しておくことも大事でしょう。加えて、「社会言語学」と「言語教育学」の両方を学んでおくことも、リスクマネジメントとしては有効かもしれません。仮に自分がメインとする領域の問いに答えられなくても、もう一方の出題に解答可能な場合はけっこう多いようです。

第III問は、例年、文学系では1~2段落の文を与えられて、それに関するテーマで解答をすることを求められます。また、社会言語学・言語教育学はそれぞれ、実際に行った実験や調査などを示す、グラフ・図版をめぐって解答させる問題が出題されています。

文学系の場合、第II問と同様に、第III問でも2問が例年出題されています。出題傾向を見る限りでは、1問は、文学理論寄りの出題で、ポール・ド・マンや、竹村和子など、文学研究を経験した人間なら(私の大学院時代の専攻は、「英語圏文学・文化理論」でした)「難しそう」となる文が多く、実際、難読なものが多いと言えます。その結果、もう1問の方を選択する解答者が集中するかもしれません。ただし、丁寧に読めば、上記のような文学理論寄りの出題も、そんなに解答しづらいものとは限らず、見た目の「難しそう」に惑わされず、自分のもっている素材で論じやすい方を選ぶと良いでしょう。

社会言語学・言語教育学の場合、第III問では、当該分野で行われた実際の研究の結果を示す、グラフや図表の問題が出題されることが多いです。実はこれは、第II問よりも対応しやすいです。図表と言えば「統計か?」と緊張してしまいそうですが、実は、最低限の英語力があれば、統計の知識が無くても、何が書いてあるか、を理解することは十分にできる素材が与えられています。また、当該研究分野の知識については、基本的な内容さえわかっていれば、あとは、図表やグラフの読みで解答できるものが圧倒的に多いと言えるでしょう。また、過去には、「勤務しているデパートの階層性による使用している言語の違い」(社会言語学)や「臨界期仮説」(言語教育学/第二言語習得)などの、当該研究領域で著名な研究についての図表が出題されていたこともあります。近年は、そこまで著名なものは出題されていないようですが、ちゃんと勉強し、図表にちゃんと向き合えば、必ずしも答案を作成するのは難しくない出題が多いと言えます。

言語情報科学の専門対策で必要なのは、過去問をしっかりと分析して、どんな知識が必要とされるのか、を把握し、それに見合う学習を進めておくことです。当然昴では、こういった点のアドバイスもどんどん行っていきます。

英語・論述担当 高橋

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東京大学 総合文化研究科共通英語試験対策について

東大 総合文化研究科 共通科目「英語I」について

昴教育研究所、英語・論述担当の高橋です。

東大総合文化研究科各専攻・コースごとの入試の特徴と対策を随時更新していきます。その手始めに、一部を除きすべての専攻・コースで共通して出題される「英語I」という科目の特徴について説明しておきます。

東大総合文化研究科(文系)では、「人間の安全保障プログラム」を除く各専攻・コースでは、「英語I」という共通科目が課されます。(外国人受験生は除く。)

これに、各専攻・コースごとに行う「外国語II(1言語あるいは2言語)」を組み合わせたものが、総合文化研究科入試の外国語試験です。

(1)「英語I」の出題の形式

総合文化研究科、「英語I」では、過去少なくとも20年にわたり、大問が3題出題されており、第1問、第2問は英文の理解を問うもの、第3問が英語の筆記力を問うものという形式は変わっていません。

(2)第1問、第2問(英文の理解を問う問題)の出題傾向

第1問、第2問は、過去、英文和訳に加えて、下線部の説明や下線部を要約させる問題など、ちょっと工夫した問題が出題されていました。

しかし近年は、「英文和訳」が多く出題される傾向があります。この背景の一つとして推測されるのが、「文法訳読」の再評価です。

近年の中等教育段階(中学校~高校)では、ダイレクト・メソッド(英語を英語で教える)など、「コミュニケーション重視」の英語教育へのシフトが起きています。しかしその結果として、「英文の意味を細部まで正しく読む」という部分が疎かになっている、という懸念もあります。学術的な外国語読解では、「おおまかな意味」の理解では、研究に役立ちません。もちろん、日本語訳を作成することだけが、「英文の意味を細部まで正しく読む」ことを試す方法ではないでしょうが、「英文和訳」の価値は、再度見直されているとも考えられます。

もちろん上記はただの推測であり、突如出題が変化する可能性はありますが、しかし今後とも、出題形式に変化があろうとも、「細かいところまで正しく理解できているか」を問う出題が続くものと思います。

出題内容は多岐にわたります。ただ、特定の専門分野に偏るのではなく、広義の文化現象について、日常・芸術・文化・研究をめぐって幅広い内容が出題されます。そこで求められるのは、『詳解 大学院への英語』(高橋著、2017年、東京図書)の序論で記した言葉のくり返しですが「英語(外国語)で、自分が今まで知らなかったこと、考えてもみなかったことを学ぶことを楽しむ態度(attitude)」であると思います。

宣伝:昴の設置科目、「英語基礎」「英語読解」「英語構文」「英語院試問題演習」では、こうした問題に対応するべく、英語を理解するうえでの基本的な知識から、単語の意味や語法の盲点、文法上の盲点など、多岐にわたる英文読解のエッセンスをお伝えしていきます。また、春期集中特別公開講座では、実際の院試を想定した試験方式の授業を実施しますので、現在の自分の実力を知るためにも受講をお勧めします。(→「外国語設置講座一覧」)

(3)第3問(英語を書く力を問う問題)

第3問については、ほとんどの年度は、「和文英訳」の形式でしたが、2015年のみ、図表の説明を50語ほどの英文で求めるものでした。(この出題については、東京大学の学部入試における、二次試験での英作文問題を思い浮かべてもらうと良いでしょう。)この傾向が続くかな、と思っていたら、翌年からはまた、過去と同様の和文英訳問題に戻っていたので、少し拍子抜けしました。なので、基本的には和文英訳の問題が出ることを想定しておくと良いでしょう。

和文英訳問題で特徴的なのは、「生きた日本語」の文章が出題される、ということです。たとえば、「私は大学に入ってはじめて、本当の意味で文章を理解することの重要性がわかった」という文が出題されたとします。この場合には、「ああ、not untilを使って書くことを求められているんだな」と理解して、それを用いて骨格を考えることができます。

一方、実際の論文・書籍からの出題の場合、そうはいきません。日本語としては意味が通る文でも、それを英語にしようとすると、言葉足らずの部分を補わなければいけないうえに、用いる構文も複数の選択肢が発生します。

宣伝:昴の「ライティング」の授業は、この英語Iの和文英訳問題への対応を主たるターゲットにして、英語を書く力の養成を目指します。春~夏学期には、知っているはずの英文法知識を実際に使えるようにする基礎固めを行い、秋冬学期では、上記のような「生きた日本語」を英語にするための様々なストラテジーを確認していきます。(→「外国語設置講座一覧」へ

昴、英語・論述担当 高橋

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東京大学 教育学研究科の受験対策

東京大学大学院 教育学研究科の入試対策

昴教育研究所、英語・論述担当の高橋です。
本日は、東京大学大学院、教育学研究科の入試の対策について記します。

同大学院の募集要項は、以下の外部リンクのページの下の方で閲覧できます。
東京大学教育学研究科「大学院進学希望の方へ

(1)東大教育学研究科 入試の特徴

東京大学教育学研究科入試の特徴の一つとして、「英語」の重要性が挙げられます。まず、同大学院では、外国語はすべて英語が課されます。他の外国語を選択することはできません。そのうえで、試験時期が9月であり、「研究計画書」の提出が課される一方で、「卒業論文」の提出はありません。そのため、判断材料として、一次試験が相対的に重視されること、また、一次試験において差が付きやすいのが英語であることから、結果として、英語がかなり出来ていないと合格は困難です。また、二次試験は研究計画書を中心とするため、研究計画書作成においても、入念な準備が必要です。

なお、東大教育学研究科の募集定員88名に対して、過去4年間(2018年度入学まで)の入学者は90→97→82→85で推移しており、募集人員を満たす傾向にあります。(総合文化研究科・人文社会系研究科・学際情報学府研究科・公共政策大学院などは、例年、募集人員よりも合格者が少ない状況が続いています。)ただし、各年度とも、倍率は3倍を超えており、難関大学院であることは言うまでもありません。

(2)東大教育学研究科 英語試験対策について

同研究科の英語試験は「英語I」と「英語II」があります。ここでは主として英語Iを念頭に置きながら、最後に英語IIについて記すこととしましょう。

同研究科の大学院入試は、全コース共通です。3問中2問を選択する形式で、3問とも英文を全訳する形での出題です。出題の分量は1~2段落で、だいたい170~230語程度の文が出題されます。出題内容は、同研究科のコースの幅広さを反映して、狭い意味での「教育学」の出題というよりは、臨床心理学や認知心理学を含む心理学的内容や、グローバル化と労働市場の変容をめぐる問題、公教育と国家の関係をめぐる問題など、多岐にわたる内容が出題されており、「専門知識」の問題ではなく、英語力の根本を問う問題である、と評価できます。また、試験時間も院試としては標準的で、しっかりとした英語力のある人なら、時間切れの心配はそれほどしなくて良いでしょう。

出題の難易度は「標準的」です。多くの人が訳すことができる平易な文も含まれますが、複雑な構文も各問に含まれており、解答者の英語力をバランスよく反映することができる出題です。

試験対策としては、基本的な英文解釈に関する訓練を積み、文法知識や語彙などについて、盲点が無いようにしていくことが一番重要です。平たく言えば、「英語力をつける」こと以外に合格の早道はありません。昴の受験対策科目では、「英語院試問題演習」と中心とした受講をお勧めしております。
(詳しくは、「外国語設置科目一覧」をご覧ください。)

最後に「英語II」について補足しておきます。英語IIは外国人受験者、および、一部コースの社会人受験者が利用することができます。詳しくはこのページ冒頭に掲載した、東大のページの募集要項をご覧ください。

英語IIは英語Iに比して、解答時間が長く、また、辞書使用可であることが特徴です。かつては、問題の難易度についても、英語Iより平易である傾向にありましたが、近年は難易度を上げており、英語Iと英語IIの難易度の差は縮まってきています。

「辞書使用可」と言って、甘くみてはいけません。英語教育に携わったことがある人間なら誰でも知っていることですが、辞書を使ったからと言って、正しく訳出できるなら苦労は無いし、世の中で出版されている文献の「誤訳」なども発生しません。辞書を使えることで、かえって、上位の受験者とそれ以外の受験者の差が開きやすい試験です。入念な試験準備が必要でしょう。

(3)東大教育学研究科 専門試験対策について

同研究科の専門試験は「基礎教育学コース」「比較教育社会学コース」「生涯学習基盤経営コース」「大学経営・政策コース」「教育心理学コース」「臨床心理学コース」「身体教育学コース」「教職開発コース」「教育内容開発コース」「学校開発政策コース」の10コースごとに出題されます。(ちなみに「教職開発コース」「教育内容開発コース」「学校開発政策コース」は「学校教育高度化専攻」として、共通問題が課されています。)

コース毎の違いはあるにせよ、特徴として浮かび上がってくるのは、「問題意識」と「論述力」の重要性です。「教育」は元来、社会のあり方や価値観と密接に関わる領域です。加えて、グローバル化、金融経済の発展、新自由主義/緊縮、ポスト・フォーディズム的生産など、様々な呼び方がされる今日の社会の変動のなかで、日本の教育は(良くも悪しくも)大きな変化にさらされています。そうした社会変動や圧力のなかで、いかにして、未来の社会と人間を考えるか、という問題意識が、同大学院の専門問題からはうかがわれます。

上述のような点から、同研究科の専門問題対策は、概説書・入門書の類いを読めば事足れり、というたぐいのものではありませんし、ましてや、「教育学」と名前のついたレクチャーを受講しただけで対応できるものではありません。しっかりとした過去問研究に基づきながら、同大学院に所属する教員の論文・書籍を足掛かりに、現在、教育学のそれぞれの領域において問題になっている状況を理解し、問題意識を共有しておくことが、合格に近づく道だと言えます。

以上のように述べるとハードルが高く聞こえるかもしれませんが、一点だけ、学習しやすい理由があります。それは、教育というものが、私たち一人一人にとって身近な存在だということです。一例として「大学経営・政策コース」を挙げておきましょう。私たちは、いずれも、自分なりに「大学」という場を経験し、そして、さらに大学に参加して学ぼうとして、大学院受験を志しているわけです。そうした人にとって、近年の大学や研究をめぐる変容を見逃すわけにはいきません。このようなことは、あらゆるコースについて言えるでしょう。「教育」というテーマは、身近で、関心が高いだけに、ちゃんと文献を使ってインプットしていけば、身近な問題として理解できる分野だと言えます。

(4)東大教育学研究科 研究計画書と二次試験対策について

上述のように、一次試験で高い水準の得点が求められる同大学院ですが、同時に、「研究計画書」と「二次試験(面接)」も重要です。卒業論文の提出が無い分、短い字数(A4用紙2枚程度)のなかに、先行研究への理解や網羅性、そうした先行研究との関係で自分の研究の位置を明らかにする工夫が求められます。

「面接」は、募集要項では、「主として専門科目について行う」と記されています。これだけ読むと、「〇〇についてあなたはどう考えますか」など、口頭でのクイズのような試験を想定する方も多いでしょう。ただし実際の試験について、過去の受験者からの報告を聞くと、「研究計画書」が重視され、その中に内容を掘り下げる質疑応答が中心になるとのことです。したがって「研究計画書」をしっかりと仕上げるのが、一番の二次試験対策だと言えます。ただし、研究計画だけで判断するわけではないようです。表面的な知識や情報をつないでも、その研究計画の背景にある問題意識・研究テーマに至った背景や動機などがしっかりと問われます。

これは東大教育学研究科に限った話ではありませんが、2000文字程度の研究計画書を書き上げるためには、その何十倍のインプットが必要になります。そうしたインプットをしっかりと行っていけば、自ずから、問題意識も明確になってきますし、加えて、専門問題の対策にもつながっていくでしょう。

昴では、過去の受験者の例を踏まえながら、本人の努力が形になった研究計画書の作成をサポートします。(昴教育研究所の「研究指導」)

*以下もご参照ください。教育学研究科の合格者の声です。

東京大学 教育学研究科合格体験記 1

東京大学 教育学研究科合格体験記 2

東京大学 教育学研究科合格体験記 3

東京大学 教育学研究科合格体験記 4

東京大学 教育学研究科合格体験記 (勉強法を中心に書いていただきました)

 

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東京大学 人文社会系研究科 受験対策について

昴教育研究所・言語文化研究所の英語・論述・研究指導担当の高橋です。

本日は、東京大学大学院、人文社会系研究科の入試対策についてご紹介します。

東大人文社会系2019年度の募集要項掲載ページ(外部サイト)

以下、6つの項目にわたって記します。
(1)東大 人文社会系研究科、近年の入試制度・特に日程面の変更に関して 
(2)東大 人文社会系研究科の組織と入試システム 
(3)東大 人文社会系研究科、語学試験の特徴(英語を中心に)
(4)東大 人文社会系研究科、語学試験の難易度 
(5)東大 人文社会系研究科 専門試験対策 
(6)研究計画書および卒業論文に代わる論文について

(1)東大人文社会系研究科、近年の入試制度・特に日程面の変更に関して 
まず、同研究科の近年の入試制度の変更について記しましょう。
・夏季入試の一部導入
長年にわたり、同研究科の入試は冬季(1~2月)のみ実施されてきました。これに対して、2018年度(2017年)入試より、一部の専門分野で夏季入試(8~9月)が導入されています。

・冬季入試の日程変更
もう一点、重要な変更は、2019年からの冬季入試の日程変更です。従来冬季入試は、センター試験の翌週土曜日に一次試験が実施されていました。そして、同日には総合文化研究科の文系4専攻+人間の安全保障の試験も実施されていました。したがって当然、人文社会系と総合文化の両方を受験することができませんでした。これが、2019年度には、一次試験の日程が変更され、総合文化研究科の試験日と別の日に実施されました。つまり、総合文化研究科と人文社会系研究科の併願が可能になったのです。東京大学の大学院ならなんでも良い、と無闇に併願するのは決して推奨しませんが、両大学院は比較的似た領域を扱うことができ、どちらの大学院でも研究ができる人にとっては、チャンスが増えた、と言えるでしょう。
(この措置は10年ほど前に一度実施されています。その翌年からはまた同日に戻りました。したがって、来年度も別日程が維持されるかは現時点では見通すことはできません。)

上記のような変更は、受験生の増加を目指した変更だと推測できます。ただし、これは入試が簡単になったということは意味しません。むしろ、「入試を簡単にしない」ための措置だと考えられます。従来の厳しい基準を維持したまま、入学者の数を確保するために取られた措置だと考えるべきでしょう。

実際、志願者数は364名(2017年度)から405名(2018年度)へと増加していますが、入学者数*は逆に、128名(2017年度)から113名(2018年度)へと減少しています**。
*入学者数と合格者数はほぼ近い数字である、とみて差支えありません。
**東京大学人文社会系および総合文化研究科(文系)においては、「定員」はあくまで目安で、実際の合格者はそれより少ないです。たまに予備校等の大学院入試情報サイトで、「受験者数」と「定員」から「倍率」を割り出して、あたかも大学院入試が容易であるかの如く宣伝しているのを目撃しますが、そのような「まやかし」に惑わされることなく、情報を取捨選択しましょう。

(2)東大人文社会系研究科の組織と入試システム 
東大人文社会系は、基礎文化研究専攻、日本文化研究専攻…etc.というかたちで7つの専攻に分かれています。ただし、院試という点では、この単位にはそれほど意味はありません。語学は共通試験*を実施し、専門試験は「専門分野」ごとに実施されます。二次試験の面接でも、基本的にはこの「専門分野」の所属の先生方が出席されることが多いようです(いくつか例外の報告もあります)。
*英語英米文学、フランス語フランス文学のような各国文学の専門分野では、専門問題の中に当該言語の語学試験が出題されます。詳しくは次の項目をご覧ください。

(3)東大人文社会系研究科、語学試験の特徴(英語を中心に)
一部の専門分野、および、文化資源学・文化経営学の≪社会人特別選抜≫を除いては、2つの外国語の試験を解かなければなりません。また、「英語英米文学」など、ある特定の言語地域の言語や文学を対象とする専門分野では、専門問題の中に、独自の問題を含めてあり、そのため、人文社会系の外国語共通問題で当該言語の試験は実施されていません。

上記のような各国文学の専門分野では、難解な文章を短時間で日本語訳することや、その言語でまとまった量の文章を書く表現力などを問うことが多く、難易度はかなり高いと言えるでしょう。

さて、共通問題の分析に戻りましょう。私は英語の担当なので、英語の問題を中心にご紹介いたします。まず基本的な形式は、英語長文の下線部を日本語訳する問題が、2問出題されます。英語で書く出題は少なくとも、過去30年は出題されておりません。

出題の傾向としては、2008年度までと2009年度以降で大きく変化がありました。2008年度までは、訳出箇所の量が少なく、そういった中で、「仮定法条件節中のifの省略」や、「no比較級を利用した構文」、さらに「文の中間に修飾語句が挿入された形」など、構文の把握で失敗すると大きく減点を受ける内容が出題されていました。一見すると、「簡単」にも見える試験ですが、英語の教師からすると、「点差が大きく開きやすい」「一つのミスが大きく影響を及ぼす」問題と感じます。

2009年度以降は、出題の量が徐々に増えていき、一時期は、解答時間内に解くのが苦しいくらいまでに増加していました。その傾向は2017年度まで続き、2018年度夏季入試からは、少し分量の厳しさが緩和されています。また、2017年度までは毎年のように、物語文(小説など)が出題され、その多くは、第二次世界大戦前、あるいは19世紀後半の文章に由来するものでした。しかし、2018年度夏季および2018年度冬季はそのような出題が出されておらず、まだ公表されてはいませんが、2019年度の夏季・冬季入試とも、物語文は出題されなかったようです。これは注視していくべき傾向ですが、受験者は、物語文が出題されても、慌てずに、文法を最優先して解答を作成するように心がけましょう。(「どこを舞台にしたいつの物語かもわからず、かつ語り手のジェンダーもわからない」物語文において、安易に「文脈」などと言い出すのは大失敗の元です。)

以上のような変遷を経つつ、現在の出題は、標準的でバランスが取れた出題と評価できます。文章内容は、「ウィリアム・ジェイムズの評伝」(2018夏)、「大規模気候変動が国際社会にもたらす影響」(2018夏)、「意志決定をめぐる心理学的考察」(2018夏)、「技術変動がもたらす教育の変化をめぐるユートピア的思考の批判」(2017)など、特定の専門領域に偏らず、しかし読み応えのある、面白い内容の出題が多いです。下線部は、英文法・熟語・語彙についての基礎的・標準的な知識を問う箇所から、しっかりとした構文把握をしないと大きく誤ってしまう箇所まで、上手にバランスを取って、受験者の英語力の正当に評価しようとするものです。

(4)東大人文社会系研究科語学試験の難易度 
これも英語中心になってしまいます。ただ、フランス語の先生のお話では、フランス語について「東大、総合文化研究科よりは文章の難易度は高くない」とのことでした。そしてこの点は、おおむね、英語についての私の評価とも一致します。

ただし、過去のデータから、一次試験の突破に要求される得点率は、かなり高いものがある、と感じています。実は専門分野によっても、語学試験でのハードルは少し異なっているのですが、それでもおおむね、私の採点では、第一外国語に関して、標準的な専攻では、70%~75%は超えたいし、よりハードルの高い専攻では、80%は超えなければいけないだろう、と感じています。

また、第二外国語に関しては、上記より少し低い得点率でも許されると思いますが、決して、簡単に突破できる試験ではありません。

あくまでも、過去の限られたデータ*に基づくものですが、東京大学、人文社会系研究科は、語学に関して、一次試験の突破がもっとも難しい研究科の一つです。
*大学院入試において、信頼できる規模の「模擬試験」は存在しません。その点で言えば、昴での過去の受講生の得点や合否は、限られているけど相対的には「マシ」なデータだと考えられます。

(5)人文社会系研究科 専門試験対策 
専門試験は「専門分野」ごとに出題され、出題の内容はもちろん、その出題形式も大きく異なっています。いきなりある学問分野の「概説」「入門書」「文学史」などに飛びつくのではなく、まずは過去問を見て、どういったことが問われているのか、という点を確認することが重要です。特に、専門分野によっては、英語などの外国語で文章を読んで論じることを求められたり、論述中心の分野もあれば、実質的に、「知識」のみを問う分野もあります。

そうしたなかで、一つ特徴的なのは、「用語説明」問題での要求の高さです。
通常、多くの大学院入試では、当該分野についての用語説明は「選択式」のものが多いです。たとえば、「以下の7つの用語から3つを選択して知るところを記せ」のような形式です。それに対して、東大では、出題されたすべての用語を説明することを求められます(ちなみにたとえば「哲学」では、英語はもちろん、ギリシャ語表記の用語まで、そのまま出題されています)。

このように用語説明がハードルが高い反面、全ての用語が説明できなければいけない、とは考えない方が良いでしょう。もちろん、こうした用語説明は、ある学問分野の人々が共有しているべき事項を示すものですが、そういった要求にこたえるのは必ずしも容易ではありません。少なくとも、「大学の講義」をただ受けていただけで身につくものではありません。その点はちゃんと対策すべきである一方で、あまりそちらにとらわれて、語学や論述形式の出題への応答が甘くなってしまっては本末転倒だと思います。

(6)研究計画書および卒業論文に代わる論文について
事務局作成の、「昴の研究指導」にも書いてある通り、二次試験のために提出する「卒論相当論文」はかなり重要です。この点に関して言えば、人文社会系は、出願時に研究計画を提出し、その後*卒業相当論文を提出することになっています。このため、実質的には、研究計画は卒論相当論文によって更新されており、むしろ、卒論相当論文を改めて作成したあとの研究計画について、再度述べることが求められるようです。もちろん研究計画書を疎かにして良いわけではありませんが、本命は卒論相当論文だと考えましょう。
*夏季入試については第一次試験実施前、冬季入試については第一次試験実施後

当然ながら、人文社会系研究科に提出する卒論相当論文は、東大文学部のなかでも、研究を志す人の卒論に匹敵するものでなければならず、相当な準備を以って、かつ、細心の注意を払って執筆したものでなければいけないでしょう。こちらもかなり高い要求ですが、難関の一次試験を突破したのに、こちらの論文の不出来や努力不足で不合格になることがないように、しっかりと「勉強」と「研究」の両立を図る必要があります

夏季入試をお考えの方、なかでも、2020年度に大学4年生を迎える方は、特にご注意ください。この試験では、「卒論」か「卒論に代わる論文」の提出時期がかなり早くなっています(2019年度は8月)。大学では、「就職活動の長期化」の影響もあり、「卒業論文」への動きがかなり後ろにずれこんでいます。昴では、3月末に正式開講する「春季集中特別公開講座」以前でも、本科生への正式なお申し込みか、オーダーメイド講座の利用によって、早期にこの卒論の作成のための面談を実施しています。研究は、≪インプット→全体の計画→インプット→計画の見直し→章構成→執筆≫という試行錯誤のうえで、ようやく形になります。専攻によって8,000字、12,000字、20,000字、40,000字(20,000~40,000は研究分野にもよりますが、卒業論文相当の分量と言って良いでしょう)と、要求される字数は様々ですが、8000字で説得力のある内容の提出物を作成するにも、膨大なインプットが必要となります。ぜひ、お早目の準備を心がけてください。

昴、英語・専門論述担当 高橋

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以下は東大人文社会系研究科合格者の合格体験記の一覧です。あわせてご参照ください。

東大人文社会系 合格者の声まとめ

 

東京大学 総合文化研究科(文系) 入試対策概要

昴教育研究所・言語文化研究所の英語・論述・研究指導担当の高橋です。

2018年度大学院入試もついに佳境に入ってくる時期ですね。
昴で主に進学している大学院の入試対策について、少しずつ更新していきます。

初回の本日は、昴の過去の受講生がもっとも多く進学している、東京大学総合文化研究科専攻(文系)の入試対策の概要を記します。同研究科は複雑な構造をしており、入試対策を考えるうえでも、その点を整理しないといけません。

このカテゴリーに入るのは、東大総合文化研究科のうち、「文系4専攻」および「人間の安全保障プログラム」です。

合格者の勉強法などはこちら→昴教育研究所合格者の声

まず先に、全体像をつかんでしまいましょう。東京大学総合文化研究科は、入試という点では、以下の8つにカテゴリー化できます。

・東大 表象文化論コース
・東大 比較文学比較文化コース
・東大 文化人類学コース
・東大 言語情報科学専攻
・東大 地域文化研究専攻
・東大 国際関係論コース
・東大 相関社会科学コース
・東大 人間の安全保障プログラム(HSP)

組織としては、東京大学総合文化研究科の文系コースは「超域文化学専攻」「地域文化研究専攻」「言語情報科学専攻」「国際社会科学専攻」から成り、それを総称して、「文系4専攻」と呼ばれます。またそこに、所属する専攻を任意に選べる、「人間の安全保障プログラム」が加わります。

ただし、「超域文化学」は実質的に、「表象文化論コース、比較文学比較文化コース、文化人類学コース」という3つの間口に分かれていて、語学の問題は共通ですが、専門は異なる問題が出題され、合格人数も別途にカウントされます。

また、「国際社会科学専攻」は「国際関係論コース」「相関社会科学コース」の2つに分かれ、語学は共通ですが、専門は異なる問題が出題され、合格人数も別途にカウントされます。

「地域文化研究専攻」「言語情報科学専攻」は専攻単位で入試問題が作られています(ただし、地域文化専攻の語学入試問題は、超域文化研究科の3つのコースと共通です)。したがって、院試のうえでは、3+2+1+1+1=8つの部門に分かれている、と考えると良いでしょう。

さて、形式的な話だけでは「そんなこと知っている」という方ががっかりしてしまうといけないので、詳細は後日に譲るとして、東大総合文化研究科の合格を目指すうえで、大事なポイントを簡単にお話しておきたいと思います。

(1)研究と勉強の両立を--「提出論文」の重要性

東大総合文化に限らず、冬期に受験を実施する大学院では、「卒業論文あるいはそれに代わる論文」の提出が求められます(以下、「提出論文」と呼びます)。院試では「研究計画書」という言葉と「研究室訪問」という言葉が注目されますが、上記のような提出論文が課せられる大学院の場合、合否の圧倒的な比重は、「提出論文」の出来にあります。「面接対策」という話もよく質問されますが、それも結局、どこまでこの「提出論文」を高い水準で完成させることがポイントです。

過去の事例を分析するかぎり、特に総合文化研究科の上記の8つのカテゴリーでは、(1次試験突破が条件なのはあたりまえとして)この論文の成否が合否を分けると断言できます。「卒業論文」というのは、人生初のまとまった書き物(そうじゃない人もいるでしょうけれど)として、大変愛着もあるものだと思います。しかし、同研究科のいずれのカテゴリーでも、生半可な論文では合格はおぼつきません。

ぜひ昴教育研究所の論文指導を…と言いたいのは抑えつつ、相当にしっかりと論文を準備しながら、語学対策や専門対策にもしっかりと力を入れないといけない、というのが、この大学院の入試の大変なところだと言えます。

(2)どのコース・専攻・プログラムを志望するか――専攻の名前で判断しない

次に基本的なところですが、志望する院をどうやって決定するか、です。「学際的」大学院の代表格とも言える「駒場」ですので、その専攻やコース名は聞き慣れないものであり、その名前を聞いた瞬間に何をやっているのかわかる方もあまりいないでしょう(あるいは名前で思い浮かべていたものと、やっている内容がずれていたりすることもあるでしょう)。

たとえば表象文化論学会の学会誌として位置づけられる『表象』の2018年の号『表象12』の冒頭には、表象文化論研究の先駆的な研究者の一人である、佐藤良明氏のエッセイが掲載されています。そこで佐藤氏は、「表象文化論」という言葉を説明するために、「『それは、21世紀の文学部です。』と言い放ってしまった」というエピソードをご紹介されています。これは筆者としては、「うまいなあ」とも思うのですが、佐藤氏ご自身はすぐに「ちょっと騙してしまったかもしれないと不安になった」と続けていらっしゃいます。(註1)

いきなりマニア的なエピソードかもしれませんが、「〇〇学って結局何なんだろうねー」というのは、内部の人たちもちょっとした会話の枕として使うくらいの疑問だったりします。また、たとえば「言語情報科学専攻」という名前を聞いて、その中の大きな柱の一本が文学研究である、ということを即座に理解できる人もあまりいないかもしれません。

そういった大学院で、志望先を決定する際、一番重要なのは、教員の情報です。実際に所属している先生を見て、自分の研究に合った先生がいるのか、というところをまずは確認しましょう。なお、東大総合文化研究科は、概して、あまり「研究室訪問」を推奨していないようです。(「研究室訪問」については、改めてまとまった量の文章を書きたいと思います。)そのため、説明会にその先生がいらっしゃっていれば「ラッキー♪」ということで、ぜひお話を伺いましょう。

もちろん、昴教育研究所では、「入学に関する相談」の段階から、志望先大学院のご相談にも気軽に応じております。

(3)語学について――まずは、必要な語学試験を把握しよう
本来、試験に必要な情報というのは、自分の力でしっかりと大学院のホームページを見て、そこから募集要項などにたどり着いて…というのが望ましい。しかし、多くの大学のホームページ(実はこれは和製英語なのですが、やはり便利なので使ってしまいますね)は、迷路のようになっていて、たどりつきたい情報がどの階層にあるのからすら…ということがままあります。

というわけで、手っ取り早く。こちらのリンクの下の方に、東大総合文化研究科の募集要項、入学試験案内、提出課題がpdfで入手できます。そちらをご参照ください。(外部リンク:東大総合文化研究科 「修士課程・博士課程への出願」

さて、それはともかくこちらのページでも概要を記しましょう。

〇 英語+第二外国語が必要とされる専攻・コース
・表象文化論コース
・比較文学比較文化コース
・言語情報科学専攻
文化・文学・芸術に関わる研究の場合、たとえばその研究対象の言語はできなければいけないのは当然ですし、その専門が英語圏の対象であっても、第二外国語も使いこなす研究者は山ほどいます。世の中がいくら「英語」(それも「実用英語」)を喧伝しようとも、外国語を複数理解できることは、学問においてとても重要なポイントです。

なお昴教育研究所では、第二外国語として、フランス語のクラス授業、ドイツ語のオーダーメイド講座授業を実施しています。いずれの言語も、未修の状態から昴に入学し、試験までの9か月で間に合わせた人はたくさんいます。

〇 英語のみでも受験できる専攻
・文化人類学コース
・国際関係論コース
・相関社会科学コース
「英語のみ」と言って喜んではいけません。それぞれに、出題のレベルは高く、要求される水準も高いと考えてください。それは、それぞれの専門領域からしても当然のことです。

文化人類学コースが英語のみで受験できるのは、ちょっと面白いですね。どの地域をフィールドと選択するかにもよりますが、この学問領域は、それに携わる人の言語能力に強く依存しています。勝手に理由を推測すると、あまりにも必要とされる言語が多様であることや、大学院入学後に集中的に学んで、そしてフィールドワークに向かわなければならない、といった事情が関わっているかもしれません。

国際関係論・相関社会学科学の両コースも、膨大な量の英語の論文・文献を読みこなして行くことが求められるでしょう。

また、上記の3コースは「英語のみ」で受験できるにせよ、第二外国語を別途選択することができます。たとえばフランス政治を研究する人ならフランス語を、ドイツの環境政策を勉強する人ならドイツ語を選択することで、その語学力を示すことは必須でしょう。

〇 人間の安全保障プログラム(HSP)は?
HSPは、独自の筆記試験は実施せず、TOEFLあるいはIELTSの提出を求めています。入学試験実施案内にはわざわざ以下のような言葉が入っています。

「TOEIC はアカデミックな英語力をはかるものでないため、受理しない。」

メッセージ性を感じる文言です。

TOEICも出題形式が変わり、以前より得点を取りづらくなったと聞きますが、アカデミックな4能力を試すTOEFLやIELTSの得点の伸ばしづらさはそれとは比べ物になりません。かなり早い時期から、計画的に準備に取り組んでいくことが必要でしょう。なお、別の言語の能力を証明する書類も提出できるので、英語より得意な言語(あるいは英語に匹敵する言語)があれば、ぜひそちらでも、資格試験や能力試験を受験して、スコアを計上できるようにしておきましょう。

〇 東大総合文化の語学筆記試験の形式や難易度は?
上述のように、HSP以外は、独自の筆記試験を実施します。細かい話は、改めて各コースや専攻の分析として提示しますが、おおまかな内容を示しておきます。

形式:外国語の和訳・和文の外国語訳・説明問題・専攻によってはライティング
基本的な出題は、文章を読ませて、その理解を問う問題が多いです。近年は英文和訳の比重が高まっていますが、(そして英語以外の言語の場合は、もともと和訳の比重が高いですが)、言葉や文の意味を説明させる問題、要約問題も出題されます。いずれも、「なんとなく単語をつなげてわかったふりをする」式の読解では太刀打ちできません。系統だった文法の理解と豊富な語彙力、そしてジャンルを問わない様々な文を読んだ経験が必要となります。

出題の題材は、専攻によって様々です。国際社会科学の場合、雑誌記事や新聞論説など、骨のあるジャーナリズムの文を読ませることが多いですが、経済学の学術文献のイントロダクションなども出題されます。

超域文化学専攻・地域文化研究専攻などの場合、多岐にわたる学術的な内容が出題される一方で、料理本のイントロが出題されるなど、非常に出題は多岐にわたっています。Mark Mazowerなどの歴史家の文が複数回出題される一方で、近年は、Sarah Ahmedなど、英語圏の文化理論の出題も見られました。学術的な英語に触れている講師からすると、「教えていて楽しい」出題が多いとも言えます。

上記のような試験に対応するためには、「芯のしっかり通った語学力」が必要です。いまだに「院試の語学は専門知識が必要」などという「デマ」を流す人もいるようですが、むしろ、「専門を問わない学術的な内容に対応できるだけのちゃんとした外国語力(文法・論理的読解・語彙力)」を持った人が合格できる試験だと思います。

語学のハードルは、極端には高いものではありません。ただし、しっかりとした学習が必要だと言えるでしょう。当然、昴教育研究所の語学カリキュラムは、その合格水準にたどりつくことを目標として、セッティングしてあります。

さて、不定期連載の最初ですが、本日はこんなところで筆をおくことにしましょう。各専攻の専門試験については、日を改めて記したいと思います。

註1 佐藤良明「二一世紀の文学部」(表象文化論学会編『表象 12』、月曜社、2018)、p7

英語・論述・論文指導担当 高橋

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